先日実家に帰り部屋の片付けをしていたら古いドーナッツ盤のレコードや古い漫画や本がでてきた。引っ越しなど、部屋片付けを何回かしているので、ほとんど古いものは処分したつもりでいたが、まだ押入の奥の隅に残っていた。

でてきた古いものの中で特になつかしいと思ったのが、ガロという月刊漫画雑誌と、ガロ系作家の漫画であった。学生時代、友人におもしろい漫画雑誌があると勧められて読んで、はまってしまった漫画雑誌がガロである。

それまでは、明るく、楽しく、おもしろいのがマンガで、巨人の星、あしたのジョー、天才バカボンなどが漫画のイメージであったが、ガロを読んで、漫画のイメージが一変した、こんな漫画が世の中にあっていいのかと思った。

ガロに連載されている漫画を一言で言うと画面全体が黒っぽく、内容のわかりづらい、くらいマンガである。

時代の流れに捕らわれず、一般読者には媚びない漫画で、作者が描きたいものを描き、独自の考えを世に問うような漫画であり、サブカルチャーの発信源のような漫画雑誌であったと思う。

根強いファンに支えられ、独自の路線で多才、異才の作家を多数輩出してやってきた月刊漫画ガロであったが、途中 休刊と復刊などしながら、、おしまれつつ2002年に廃刊となった。

ガロはもともと漫画家白土三平のカムイ伝を連載するための雑誌であったが後に商業性を無視し、オリジナルティを重視する雑誌となった。

 

主なガロ系作家

赤瀬川源平、荒木 経惟、安西水丸、糸井重里、泉昌之、内田春菊、池上遼一、蛭子能収、近藤 聡乃、しりあがり寿、杉浦日向子、鈴木翁二、滝田ゆう、つげ義春、永島慎二、魚喃キリコ、根本敬、花くまゆうさく、花輪和一、林静一、ますむらひろし、丸尾末広、みうらじゅん、水木しげる、南伸坊、湯村輝彦など他多数

DSCN0348 DSCN0351

 

泉昌之

学生時代リアルタイムにガロで読んだ作家です。ウルトラマンをパロディにした作品で、当時 、コンパでビールを一気のみしたり、下宿でカップヌードルをたべるウルトラマンをみて大笑いしました。泉昌之は作画 泉晴紀、原作 久住昌之の連名となっており、TVで話題となっている孤独のグルメの原作者は久住昌之です。代表作かっこいいスキヤキは食べ物の食べ方のこだわりを 食べる人の内面を含めて表現しているおもしろい作品です。

DSCN0358

 

鈴木翁二

透明感がり、不思議な世界へ引き込まれそうな感じのする作品が多い。絵本も描いている。幼いころ見たことがあったような景色、世界がある。宮沢賢治の世界に近いところがあるかも。

DSCN0366

 

DSCN0376DSCN0379

上が鈴木翁二の作品で下がつげ義春の作品です。 1949年生まれの鈴木翁二は1937年生まれのつげ義春の大きな影響を受けている。一時期見分けがつきにくいほど二人の作風は似ていた。又、ともに調布で漫画家 水木しげるのアシスタントをしていた。

 

つげ義春

「ガロ」で、60年代後半を中心に活躍した漫画家。団塊世代の若者を中心に支持された。漫画もそうだが、漫画以外のカルチャーへの影響力も大きくあり、現在も直接的、間接的に若者に影響を与えている。小学館文庫の「ねじ式」と「紅い花」はいまでもたまに読みます。30数年前から何回も読み返している本はよごれて変色し、だいぶ劣化してしまいましたが、今読んでもあきない斬新な作品ばかりです。学生時代読んだ「ねじ式」は強烈で、シュールで奥の深いこんな表現が漫画でできるのかとびっくりしました。 他に「沼」、「チーコ」、「初茸狩り」、「山椒魚」、「ほんやら洞のべんさん」、「紅い花」、「ゲンセンカン主人」、「長八の宿」、なども好きな作品です。

DSCN0360

 

「海辺の叙景」

つげ義春の作品の中でもっとも好きな作品です。「ねじ式」、「紅い花」と同じくらい時期に描いたもので、夏  避暑地の海辺での孤独な二人の男女の出合いを描いた作品です。

ラストシーンは下の絵で、 明日はそれぞれお互いに分かれて東京に帰るので、泳ぎおさめで泳いでいる男を、雨の中、砂浜で傘をさして女が見ているシーンです。

昔コマーシャルのワンシーンに引用されていました。赤い傘ををさした女の子が海をみていたシーンを覚えています。

本の見開きに描いてあるこの絵は文学的なフランス映画のワンシーンのようで何回見てもいいと思ってしまいます。

DSCN0370

つげ義春の作品は半世紀以上たっているのに今読んでも、何回読んでもいいと思う。80歳になる作家は休筆をして長いが、はっきり引退宣言はしていなかったと思う、ファンとしては最新作が出ていないかと、本屋のつげ義春のコーナーをつい見てしまう。