丹下健三:戦前からオリンピック・万博まで 1938-1970

10月になって秋の気配も感じられるようになり、コロナも落ち着きをみせてきいたので、外に出かけたいと思い、千代田線の湯島駅にある旧岩崎邸庭園に近接する文化庁国立近現代建築資料館で行われていた丹下健三展へいった。コロナ禍であるため予約制でお昼過ぎに予約した、少し早く湯島についたので、近くを散策してから資料館へ行った。

東大・赤門

湯島天神

旧岩崎邸

絵画や彫刻などアートの展来会とは建築の展覧会は異なる、作品の実物をもってくることはできないので、写真、模型、図面の展示がメインとなる。かつて、私が展覧会で見た建築の原寸のレプリカは安藤忠雄の展覧会で展示された、住吉の長屋と光の教会くらいであろうか。

丹下健三の初期から1970年までの作品の資料が展示されていた。図面、写真、構想中のメモ、構造計算書、模型など、図面は青焼きと白焼きがあった。図面、模型、資料だけではあるが、不思議に実物を感じ取れた。広島の平和記念公園から始まり、成城の自宅、旧東京都庁などさまざまな作品の資料があった。その中でも私が好きな三つの作品は香川県庁舎、東京カテドラル聖マリア大聖堂、国立代々木競技場である。

 

丹下健三と海上都市を構想 東京計画1960

 

丹下健三 卒業設計

丹下健三 自宅  最初は平屋の計画であったそうです。

 

香川県庁舎

香川県庁舎はの日本建築の特徴である柱、梁の組み合わせが象徴的にRC造で構築されている。木造を推奨している今なら、このようなデザインの建物が木造耐火建築物としてできそうな気がしてしまう。

 

東京カテドラル聖マリア大聖堂

学生のころ見学で教会の中に入って空間を体感した、空に伸びていくようなコンクリート打ち放しの雄大で尊厳のある空間に感動した。

 

国立代々木競技場

1964年のオリンピック競技場(水泳競技,バスケット)と今年のオリンピック競技場(ハンドボール、パラリンピックのバトミントン、車いすラクビー)、構造は吊り橋と同じ吊り構造である。斬新なデザインはメインの吊り構造と枝となる吊り構造からなる世界発の二重の吊り構造でできている。パソコンやcadも普及していないアナログな時代に、複雑なデザインで工期も短い(約500日)建築物をよくつくりあげたものだと思う。今年、国の重要文化財に指定される。

代々木からの人の流れ、原宿からの人の流れを考慮して配置プランを検討している。

神谷先生が基本デザインをした模型。当初、他の所員は世界でも類のない斬新なデザインに戸惑うが、全員で協力して創り上げていく。

屋根作図はcadがまだ普及していない時代、二次曲線の連続で組み合わせて作図している。

 

昭和時代に建てられた現代建築は年代の古い神社仏閣や、明治,大正時代に建てられたものにくらべ、まだデザインも新しいためか、趣きがなく感じられ、経済性優先のため、どんなにすぐれた建築物でも、スクラップ&ビルドの対象となってしまうケースがある。その中、丹下健三の建築作品は今後、世界遺産登録を目指している。代々木体育館を初め、すでにいくつかの建物は最新の技術で耐震改修を行っている。現代建築にあるわれわれの先輩たちのすぐれた技術が少しでも多く後世に残ってもらいたいものである。