先日、横浜トリエンナーレに行ってきました。横浜美術館を中心に2001年から継続的に3年ごとに行われている(2回目は4年となった)大規模で世界的な現代アートの展来会です。今年で20年目になります。この展来会は毎年テーマが設けられていて、それに沿った作品が作られ展示されます。
作家は日本、アジア、アフリカ、ヨーロッパ、ロシア、アメリカ 等 各国の作家が選ばれています。近年はアジア、アフリカの作家の勢いがすごいと思います。私はこの展来会に2001年の第一回から2020年の今回まで毎回行っております。2001年にいっしょに行った、幼かった長女は今は成人を過ぎており、撮った写真を見ると家族の歴史も垣間見えます。
今年はコロナの影響で、事前予約制で人数も制限された展来会となっていました。また、各国の作家も日本に来ることができず、海外から作品だけを日本に送って、作品の組み立て、展示は日本人スタッフが海外からのリモートで作家の指示を受けながら行ったそうです。
横浜トリエンナーレの2001年から2020年までのパンフレットです。
2001年メガ・ウェイブ―新たな総合に向けて―
2005年アートサーカス [日常からの跳躍]
2008年TIME CREVASSE ータイムクレヴァスー
2011年OUR MAGIC HOUR ー世界はどこまで知ることができるか?ー
2014年華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある
2017年島と星座とガラパゴス
2020年光の破片をつかまえる
2001年から2020年までこの展来会に行っての思い出は家族との思いでなどいろいろありますが、その中でも一番での思い出は私の人生でも思いで深いものです。
それは、2011年のテレフォン・イン・メイズというオノ・ヨーコの作品でオノ・ヨーコと電話で話をしたことです。
アクリル板でできた、迷路をたどっていくと電話に行きつきます。その電話にオノ・ヨーコが1日に1回か2回、不定期に電話がかかってくるという作品です。電話が鳴った時に迷路の中いるとオノ・ヨーコと話しができます。
何気なく迷路を歩いていたら、突然電話なりました。学生時代からビートルズがすきだった私は、ドキドキして、あたまの中が真っ白になった状態で受話器をとりました。オノ・ヨーコのテレビなどで聞いたことがある声が受話器から聞こえてきました。
話した内容はほとんど覚えていませんが、「どの様な職業をされているの?」と聞かれ、「建築です。」と答えると「あら、そうなの、私のやっているアートと同じく、創造的な仕事だから、がんばって!」というようなこと言われたことを覚えています。
今年2020年に見た作品のなかでよかったのは 作家:アンドレアス・グライナーのマルチチュードという作品です。
暗闇のホールで水の中の夜行虫(単細胞の藻)がピアノの演奏の音に反応し青白く光る幻想的な世界を体験しました。グランドピアノのふたをあけた弦の上に夜行虫(単細胞の藻)のいる水の入ったビニール容器が多数置かれ、暗闇の中でピアノの演奏が始まります、夜行虫は全ての音に反応するのでなく、ある音の周波数に反応し青白い光を放ちます。(音が聞こえない時でも直前に出した音の周波数が伝わるのか反応し光っていました。)デジタルアート的な光の作品は多々ありますが、自然界の生物の習性を音楽とアートをコラボさせたこんな作品はかつて見たことがなく、すごく感動しました.作家は医学、生物にも精通しており、光る夜行虫(単細胞の藻)習性を丹念に研究して作品にしています。音楽もすばらしく、ピアノの音と夜光虫が反応して放つ光 それぞれの間と調和がとれた音楽が奏でられていました。全体的に完成度も高く、生物と人とアートの関係に着目したいままでにないすばらしい作品だと思いました。
現代アートは、展示されている作品を自分なりに自由に感じていいものだと思っています。作品に対する作家の意図や考えあるものの、作品と対峙したときのインスピレーションや感動、今まで見たことのない新しさ、発想の豊かさ、完成度の高さを自分なりに享受して楽しむものでいいのではないかと思っています。作品と対峙している個人がなにを感じたのかが重要なことだと思います。